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フード
しかしながらキミはもう一度質問しようとは思わなかった。ワタシと言ったワタシは酷く疲れているようであったし、毎度毎度今し方のあれを繰り返されたのでは堪らないと思ったのだ。
ワタシと言う人物は外套のフードを目深まで被っており表情などは読み取りにくかったが、こけた頬が少しだけ動いて、微笑んでいるらしい事が解った。
「それを」
と言ってワタシが指したのは火ばさみとゴミ籠だ。
「ワタシがやろう」
「疲れているようですが、大丈夫ですか?」
「うん。できるよ。貸してくれ」
そう言うので、キミはワタシに火ばさみとゴミ籠を渡した。
ワタシはひょいひょいとゴミを拾っては籠に入れていく。
妙に慣れているので変だなと感じた。
「あの、もしかして見ていたのですか?」
「そうだね。ワタシはずっと向こうからキミの事を見ていたよ」
「そうですか。でもなぜ手伝ってくれるのですか?」
「うーん。理由は特にないよ。ただ悪意もない」
嘘を吐いているようには見えなかった。
二人は暫く砂浜の上を歩きながらゴミを拾った。空が茜色になるまで拾って、ワタシが満足そうだったので、キミもとても満足そうに笑った。
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