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スープ
ワタシは着ていた外套を脱いでキョロキョロと辺りを見回した。
「ここに置いても良いかな?」
ワタシはベッドを指した。
「ええ、どうぞ」
キミに言われるまま、ワタシは外套をベッドの上に置いた。
キミは暖炉にゴミをくべる。
ワタシもそれに倣ってゴミをくべた。
火を点けるともくもくと煙が上がり、柔らかな橙色が室内を明るくした。
しかしキミはなかなか温まらないといった様子で両手を抱いて体を震わせている。暖炉に近寄ったがいつも通りの熱を感ぜられないようで、キミはどんどんと炎に近づいていく。
「危ないよ」
ワタシに止められなければキミはそのまま火の中に身を投げていただろう。ハッとなったキミは慌てて後ろに飛び退く。
「寒くないですか?」
「そうだね。とても寒い」
どうやらこの部屋が大きくなってしまった所為で、熱が充満しないらしい。
何か体を温めるものをと思い、スープを作った。
「飲みますか?」
「ありがとう」
ワタシはスープを受け取り一口啜ると、ほっと息を吐いた。心底安堵したような安らかな口元をしていた。
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