転機

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転機

 俺は普通だ。身長も170cmちょっと、体重も65kgぐらいと見た目は普通。特技も趣味も特にない。部活にも所属していないし、友達もいない。いわゆる、陰キャというやつだ。ただ、授業を受けて、ただ帰宅する毎日だ。俺はこんな日常を想像していたわけではなかったが、それはそれでよかった。 「ただいま。」 「おかえり。マサヒロ。今日も早いんだね。」 「うん。」 俺は田舎から札幌に引っ越してきた。大学に進学したいからだ。俺は、下宿に入って生活するつもりでいたが、両親は俺のことが心配だといって、一緒に引っ越してきた。俺からすれば「ありがためいわく」である。 「今日は学校楽しかった?」 母親は俺のことが心配なのか、毎日聞いてくる。 「まあ、楽しかったよ。」 俺は嘘をついた。母親を心配させたくなかったから。 「それならよかった。テスト勉強頑張りなさいよ。」 「ありがとう。」 そういって、俺は2階にある自分の部屋に入ってドアの鍵を閉める。テストは頑張らないといけないから勉強はほどほどにする。まあ、それしかできることがないから。明日からテスト1週間前だ。1週間前になると学校全体の課外活動が停止することになる。とりあえず、今日は勉強終わったらご飯食べてさっさと寝よう。  次の日、隣の仲田さんから話しかけられた。 「マサヒロ君って、頭いいんでしょ。放課後に勉強教えてよ。」 俺はちょっと嬉しかった。高校で初めて教員以外で話しかけてくれたひとだったから。 「いいよ。」 「じゃあ。放課後に教室でね。」  俺はこの時に断っていればあんなことにならなくて済んだのに。  そして、放課後になった。彼女はほとんどの科目が苦手だった。俺は丁寧に一から教えた。 「マサヒロ君は教えるのがうまいね。授業で聞くよりもわかりやすいよ。」 「そんなことないよ。授業の話を聞いてたらだいたいはできるから。仲田さんも授業は聞いたほうがいいよ。」 「佳奈でいいよ。佳奈もマサヒロ君って呼ぶから。」 「わかった。」 「マサヒロ君、明日も勉強教えてね。」 俺は軽く頷いた。それから、テスト前日まで一緒に勉強した。このテストまでの一週間は俺の人生の中で上位に入るくらい楽しい期間となった。 「今日までありがとう。テスト終わっても仲良くしよ。佳奈、この一週間でマサヒロ君のことが好きになっちゃった。テスト終わったら付き合ってよ。」  そして、テスト後に付き合うことになった。こんな田舎からきた陰キャに初めて彼女ができた。こんなに嬉しいことは俺の人生で初めてだった。これから楽しい高校生活が始まろうとしているはずだ。      
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