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プロローグ
俺は人が苦手だ。人に限らず生物はなにを考えているかわからない。動物は吠えたり走り回ったりして今やってほしいことを伝えてくる。それはヒトの赤ん坊も同じだ。でも、成長しきった人は違う。表情が同じでも感情が違ってくるからだ。そして、人は人に嫌われることを一番に嫌がる。みんながみんな他人の顔を伺いながら生きている。なんてつまらない人生を生きているんだろうか。人の感情はわからないから考えてもどうにもならないというのに。
俺は現在、札幌で運送会社の社員として働いている。運送という仕事を選んだのは人の顔色を伺う必要がないと思ったからだ。流れてくる番号を確認しながらボックスに積んでいく。こんなに人とかかわる必要のない仕事があっただろうか。他の社員と関わることは仕方のないことだとは思うが客と関わることのないこの仕事はカラダを怪我しなければ天職だ。これ以上の仕事はないと思う。ほかの仕事なんてできるはずがない。ましてや、接客業なんてもってのほかだ。接客業では客の顔色を伺いながら対応しなければならない。そんなストレスのたまることはできない。接客業をしていればいちいち人の目を気にしすぎるせいでうつ病になって引きこもることになるだろう。
そんな仕事にも嫌なことはたくさんある。一日中ベルトコンベアから流れてくる大量の荷物をみてめまいはするし、荷物が重いせいでかなり腰に負担がかかる。正直ヘルニアを所持している俺にはきつい。まあ、人の目を気にしすぎてストレスになるよりは全然いい。
今日の仕事帰り、見慣れないメールアドレスから一通のメールが届いた。俺がメールするのは会社とのやりとりぐらいだ。どうしてこんなアドレスからメールが届いたんだろうか。しっかり確認すると高校のクラスメートからのメールだった。
「【山川高校第5期3年2組卒業生】 オンライン同窓会のご案内」
メールは10年前に卒業した母校からのオンライン同窓会の案内だった。高校にはあまりいい思い出がない。今こんなにも俺がひねくれた人間になってしまったのもすべて高校時代の出来事があったからだ。俺もまわりの人間も大人になったんだ。昔のことを忘れて今の話をしたいと思った。オンラインだから直接会場に行く必要も全くないし、なにか俺に都合が悪いことがあればすぐにやめればいい。そう思ってメールには参加すると返信した。せっかく同窓会に参加するのだからと思い、今まで開いてこなかった卒業アルバムを広げた。
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