告白の予告

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その日は 手術後の放射線治療の説明を聞くために 放射線科へ行った 「治療棟」と呼ばれるそこは、病棟とは別棟で中庭を渡ったところにある 手術で全部取り切れた 再発予防のための放射線治療 ん?それっておかしくない? がん細胞がない場所に放射線あてたって 百害あって一利なしだよ 目に見えない、検査でもわからないがん細胞がソコにあるっていう前提だよね 治療するかしないかは私の自由 わかってる 私だって医療従事者の端くれ がん細胞はそういうタチの悪いやつだって だけど何だか悶々としながら中庭を歩いていたら 出石さんがいた 「あれ?なんでこんなところに」 「日向ぼっこ」 「マジですか」 「気持ちいいよ」 ポンポンと出石さんの横を叩く そこに座れ!ということらしい 「納得してないって顔してるね」 「そうですか?」 「眉間にシワが..」 可愛い顔が台無し。と軽く髪に触れる そんな仕草が自然で この人の前では素直になってしまう 「やらなきゃいけないのは分かってるんだけど」 「迷うのも当然だよ、まだ若いんだし。再建もしたいよね」 「それはまぁ…」 「でも若いからこそ、しっかり治して欲しいな。これからいっぱい楽しいことあるよ」 風が吹いて、乱れた前髪を直してくれる 再び触れた手に、ドキドキしてしまった その翌日、同僚のゆきちゃんを誘って飲んだら 酔い潰れて、ゆきちゃんの部屋へ泊まり、祥子さんのベッドで寝た 治療のことは話さなかったけど 自分の中で結論は出た
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