返事の予告

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退院してしまえば、私には何も出来ることはない でも、やっぱり気になってしまう 探してしまう しばらくはお休みしていたみたいだけど 仕事復帰したみたいだ つい、目で追ってしまう 同僚と楽しそうにしてたり 先生と声を潜めて何やら真剣な話をしていたり あ、あの先生、救命救急センターの女医さんだ 仲良いんだぁ 胸がチリチリと痛んだけれど 元気そうな姿を見るのは嬉しい そんなある日、見かけた顔に翳りがあって気になった 歩いて行く方向で、どこへ行くか予想が出来たので、後で行ってみようと思った 古典的な...待ち伏せだ 元気にしているならいい けれど、あんな顔されたら声をかけずにいられない 「・・・なんでこんなところに」と 実際は、彼女から声をかけられたのだけど 待ち伏せとは言えず 「日向ぼっこ」と答えたら呆れられた ただ話を聞くことしか出来なかったけど その後、前向きに治療をすることになったと人伝てに知って、ホッとした この仕事も長年続けていると、異動することもあり、あちこちに知り合いも増える 放射線科にも、割と仲の良い技師さんがいたので、遊びに行くフリをしてコッソリ様子を伺うつもりだった 同じ事を考えていた人がもう1人いた あの先生だ やっぱり、あの噂は本当なのかもしれないな 私の出る幕はないか 帰ろうとしたら、声をかけられた 「乳腺外科の看護師さんですよね?」 「…はい」 「美樹がお世話になったようで」 「いえ、そんな私は何も。河合さんから私のことを?」 「あ〜違うんです。私が勝手に…一度病棟に見に行ったんです、その時に。美樹、心配されるの嫌みたいで、何も話してくれなくて、今日の放治のことも職権濫用して知ったんですよ、だからコッソリ」 「職権濫用って」 「様子がおかしいと思ったら治療のことで悩んでたみたいで、お酒強いのにあんな酔い潰れ方…」 弱いくせに意地っ張りで困る。と 少し哀しそうで、でも愛おしそうに話す 「弱い…ですか?」 「ああ見えて弱いんですよ、美樹は」 だから何かあった時には助けられるように見守っていたい。と言った表情は真剣だった 「よく知ってるんですね」 「まぁ、結構長い付き合いですから…あ、じゃ美樹のこと、よろしくお願いしますね」 「え?」 どこからか呼ばれたみたいで、電話片手に去っていった その日は、彼女に会う勇気がなく 治療が終わるのを見届けて、そのまま帰った
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