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一応、相談に乗ってもらったので
「ここは私が」と言ったのだけど
「いいよ、私も相談..というかお願いしたいことがあるから」と、また奢ってもらってしまった
お寿司代に匹敵するお願いって何だろう
これからちょっと付き合って。とのことだった
もう春がすぐそこまで来てるような陽気の昼下がり、2人で歩く
「歩くのも気持ちいいですね」
「美樹と歩くの、初めてだっけ?」
「ですね。ゆきちゃんとは、よく歩いてるってこと?」
そういうのもいいなぁ
やっぱり理想の2人だ
「たまにね。あ、私とじゃなく誰かと歩きたいとか思ってるんでしょ」
ニヤニヤしながら言うから
「まぁ、そうですねぇ」と、いつもの感じで返す
その後はしばらく無言でゆっくり歩いた
私の速さに合わせてくれてるのがわかって
やっぱり話してみようと思った
本当の悩みを。
道は川沿いに入って
犬の散歩の人やジョギングしてる人もいるけど
人との距離は離れている
「ねぇ、祥子さん」
「ん?」
「ホントは怖いの、告白するのが。もし、告白してオッケーもらえたら。もちろん嬉しいんだけど...その先に進むのが...触れ合いたいけど幻滅されるんじゃないかとか…いろいろ考えると、今のままでもいいんじゃないかとか…」
「ちょっと座ろうか」
そう言って、河川敷の草の上に腰を降ろす
ちょうど広場では子供たちがサッカーをしている
それを眺める形だ
よく見ると、親御さんなのかな?本格的なカメラでカシャカシャ撮ってる人もいる
「それは手術痕を気にしてるってこと?」
はっきり聞いてくるのは祥子さんらしいな
今はまだキスもしていない
でも、もしも付き合うことになったなら
それ以上の関係になるかもしれない
その時にあの手術痕は自分でもグロテスクだと思うのだ
私は頷いた
「そっか」
そう言ったきり、しばらくはボールを追いかける少年少女を眺めてた
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