信心なのか恋なのか

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 すごく不機嫌だったあなたと、次に会った時。  私の夢だった、本の出版は実現していました。でも思うように売れない。そんな頃でした。  初めて会った時からもう半年経って、夏の盛りの8月になっていました。  私はあなたにコンサルの名目(めいもく)で会ってもらいましたね。  特に相談内容に自信があった訳じゃないし、元を取ろうなんて最初から思ってもいませんでした。  単純に会いたかっただけです。会いたかったから10万円支払いました。  そう伝えてみた時あなたは嬉しそうで、少し照れたみたいに(うつむ)きましたね。  初めて会った時よりも、きれいな表情をたくさん見せてくれました。  有益なアドバイスはもちろんですが、何よりあなたの笑顔を見られて嬉しかったです。  もう作り笑顔ではないと思いました。時に誇らしげで、(たか)ぶるようで、照れるような笑顔でした。  あなたは時々、言っていましたよね。ついこの間のことみたいに思い出してしまいます。 「総理大臣の席を取りに行きたい」  すごく野心的で、エネルギーに(あふ)れていましたね。  私も一度は夢見ていた、世の中を平和にできないのだろうかと考えたこと。 (そんなの無理だよ)と心の奥底に押し込めて、忘れてしまった夢。  あなたを見ていると、ふつふつと夢が(よみがえ)ってくるようでした。  信者が教祖を(した)うようにあなたに興奮し、声にも外見にも惚れて、それに加えて夢を思い出すような感覚。  あなたの夢はとてもステキでした。  信仰なのか恋なのか…………  やっぱり、恋だったと思います。
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