悪阻

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 寛さんにご飯をよそいながら吐き気がこみあげてきて、トイレに駆け込んでしまう。鈍感な寛さんも、さすがに(いぶか)しんだ。 「どうしたの?」  観念した。言うしかない。 「子ども……できたかも」 「子ども?」  何と言えばいいのか全く分からなかった。これ以上の言葉が出てこない。 「……みなみは、子どもはもう欲しくないって言ってたよね」 「……うん」 「子どもができて、嬉しい?」 「……」 「みなみが嬉しいんなら、産んだらいいと思うよ」 「…………」  また気持ち悪くなり、トイレに駆け込んでもどしてしまった。もう胃液しか残っていない。  寛さんは瑠璃のお風呂と寝かしつけを引き受けてくれて、私を一人で寝かせてくれた。  寝られない。ボーッとしてくる頭で考えた。  寛さんは私の裏切りに気づいたのだろうか。はっきりとは分からなかった。  思ったより夫は落ち着いていて、状況をそのまま受け止めてくれた。  別に焦って伝える必要はないか。バレてるかもしれないけど、まぁいっか……  取り敢えずの方針を決めて安堵(あんど)すると、そのまま眠りに引き()り込まれた。
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