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タカオカさんは黙って海を眺めていた。
タカオカさんも、これが最後って思ってるのかな。
私も海を見つめて、黙っていた。
しばらく沈黙が続いた。
ふと思い出した。訊いてみたかったことがある。
「タカオカさん、前に私のこと、世界初の存在になるかもしれないねって言ってたの、覚えてます?」
「覚えてる」
「覚えてるの? ほんとに?」
「うん。覚えてる」
「覚えてるんだ……どういう意味だったの?」
今話すことじゃない気もしたけど、どうしても訊いておきたかった。
「みなみさんは素直なんだよね。本気で人にすごいって言える」
「……え?」
「上っ面ですごいって言う奴はいるよ。すごいって言って自分は頑張らない奴もいる」
「……」
「ライバルに心の底からすごいですね! って言って目を輝かせて、しかも這いつくばって食らいついてくのはさ、みなみさんだけなんだよ」
「……」
嬉しかった。でもそれはちょっと買いかぶりだと思った。私はそんなに意欲的な人じゃない。上昇志向はあまりない。堕落志向すらあると思う。
ふと、タカオカさんは成長意欲にすごくこだわっていたのを思い出した。
“上を目指す人が好き。上を見つめ続けている人”
そんなツイートをしていたのも記憶に残っている。
「えげつない上昇志向も感じるし、個性的なことも言うし、それなのにすごく低姿勢じゃない?」
「それってそんなに珍しい?」
「いそうでいないよね。それに面白いよ」
面白いよ。その言葉がすとんとハマった。
「俺を本気で応援したのも分かるし、家庭を大事にしたかったのも分かるよ」
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