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当時のあなたは……
「ふうん。どこに行くの?」
喧嘩の時に言われた寛さんの言葉は、凍りついた記憶とともに頭から離れなかった。
時折思い出して、家出する時に行ける場所ができたらなぁ……と思った。
Twitterを見る時間は長くなる一方だった。あなたが私の記事に書いてくれた、感想のリプライに心を奪われたのは冬、12月だった。
「手抜きがなくて素晴らしい。みなみさんのような人が幸せになれる世の中になるように、私もできることを考えていきます」
この言葉が本当に嬉しかった。光り輝いて見えた。
手抜きがない、と私の記事をまっすぐに褒めてくれたことが嬉しかった。
見ず知らずの私の幸せを心から願ってくれたような気がして嬉しかった。
日々繰り返す育児と瑠璃のイヤイヤにも、光があてられない自分の文章にも自信を失い、気力が尽きかけた頃だったから尚更に響いたんだと思う。
あなたが当時Twitterで展開していた世界は、豊かなものだった。芳醇な香りが漂っていた。
当時のあなたは焦っていなかったし、余裕が感じられて現在を楽しんでいた。ツイートに、リプに、あそび心があった。
正直、あなたに大人の落ち着きはない。当時もないし今もない。
当時のあなたが持っていた希有な魅力は、少年のように遊ぶ自由奔放な姿と瑞々しいワガママ、お洒落に仕上げた他者の紹介文。フォロワーの特徴を詩的に紹介するのが本当に素敵だった。
威厳というよりは愛らしさ。あどけなさが残るから、理論武装してもどこか憎めないような。
大人なのか子どもなのか、さっぱり分からないような感じもあった。言葉の端々が知的に見える。でも重みがない。軽い。ふわっとしている。そしていつも、絶妙にお洒落だった。
あなたのことを好きになったのは私が弱かったからだろうし、そんな私をあなたは軽蔑しただろうと思う。
話したいと思う気持ちが強かった。あなたと話したい、話すにはどうしたらいいかと考え続けていた。
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