理緒が生まれて

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(ちょっと、里帰りしようかな)  理緒が泣いて電話を切り、ミルクを作りながら思った。理緒がまだ一晩中寝ることができない、今の時期だけでも。少しだけ。  時々、理緒が泣いていても無視したいほど、眠い時がある。やっぱり産後すぐの時期を一人で頑張るのは無理かもしれない。    そして生後一ヶ月検診を何とか終えた。  少し肌寒くなってきた10月のある日、横浜市のはずれの金沢八景(かなざわはっけい)の実家に、私と理緒の二人で里帰りした。  思い返せば、結婚して家を出てから実家に一度も帰っていなかった。距離も離れていたし、帰りたい気持ちにならなかった。  瑠璃を連れて帰省したことはないのに、理緒と2人で帰省しているのを不思議に感じた。  でも考えてみれば、瑠璃は寛さんと一緒に育てたから実家に頼ろうとしなかっただけだ、と思い直した。  伊丹(いたみ)空港から飛行機に乗り、羽田空港から京和(けいわ)線に乗り換えて金沢八景駅に降りた。  連携(れんけい)が待望されていた京和線とシーサイドラインは、相変わらず遠く離れて連携しておらず、連携を反対していると噂される駅前のパン屋も相変わらず営業していた。  渋谷(しぶや)駅前なんかはここ数年で随分(ずいぶん)様変(さまが)わりしたのに、こっちは変わらないなぁ。良くもならないけど(すた)れてもいかないんだなぁ、などと思った。
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