オンラインサロンの異世界

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 オンラインサロンでは何をやるか決まっていなかった。  即、入会を決めた私に「一緒に(つく)り上げていきましょう」とタカオカさんは言った。  一緒に創る。何だかそわそわするような気恥ずかしいような響きだ。  ワクワクした。どちらかというと真面目な感覚。  私はタカオカさんの雰囲気が好きだった。やり取りする時の、フワフワするような楽しい時間が好きだった。  もう一度話したいと思い続けていた。成長したいと思っていたかと言うと、ちょっと違った。  たぶん、タカオカさんを目標にしていたわけじゃなかった。それでも「気になる」という興味が強かったと思う。  知りたいことを知るのに、月に5000円くらい払ってもいい。独特の楽しさの源泉を知りたかった。  ただ、何をやるのか全然決まっていない。それを含めて「一緒に創る」。  楽しい場所、居場所ができるといいと思った。  家族と一緒に過ごすことが楽しいとは思えなかったし、(つか)の間の楽しい居場所が欲しいと思った。 (せっかくオンラインサロンにお金を払うんだし、楽しもう。楽しめればいい)  こんなふうに思った。  新型コロナの流行で自宅時間が長くなり、自粛要請が初めて発令された、春の頃だった。  オンラインサロンに入るのは初めてだった。  ぼちぼち集まってきた他の仲間たちは、私に比べて段違いの意欲があった。自分にできることがあれば何でもやりたいというような感じですごく積極的だった。  反面、リーダーであるタカオカさんには、あまり意欲がないかも? と思った。 「何をやりたいですか?」とメールで質問されて、「タカオカさんに前から聞きたかったことを色々とzoomで質問してみたいです」と返した。 「このサロンでは僕のやりたいことを手伝ってもらうのを主軸にしますので、あくまでそれからずれないようにします」と返ってきた。  それならそのやりたいこと、それをまずは説明したらいいんじゃないかな? と一瞬思った。でも何となく遠慮して言えなかった。  なんか失礼な言い方になるかな? と思った。  説明するのも大変なのかな、本業が別にあるわけだし仕方ないのかな……と、擁護(ようご)するかのように思った。
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