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ある日私たちはいつも通りたっくんの家で
床に引かれたラグの上に寝転がりTVを見ていた。
「たっくん、たっくん、あの芸人さんの真似してよー」
「...」
「たっくん⁉︎」
「っうるせぇよ!」
たっくんは急に起き上がり、ラグの上であぐらをかいてそっぽを向いてしまった。斜め後ろから見えるたっくんの顔は明らかにイライラしている。
--こ、こんなたっくん見たことない。
私は気が動転して心臓がバクバク音を立てた。
気のせいかも知れないと思い、
「どうしたの、たっくん...」と
たっくんの腕のTシャツの袖を後ろから少しだけ掴んで可愛く聞いた。
「うるせぇ!さわんじゃねぇよ!」
私はショックのあまりカバンを持って
たっくんの家を飛び出した。
ケンカをして家を飛び出したら、
たっくんはいつも追いかけてきてくれる。
私は立ち止まり、たっくんはきっと後ろにいるに違いない、そう思い、可愛い困り顔で振り返った。
しかし、私の可愛い作り困り顔は無駄となった。
たっくんは、そこにいなかった。
私のカバンからはたっくんの家の鍵につけられた、たっくんがくれたクマのキーホルダーが飛び出していた。
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