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ハァハァッ、ハァハァッッ...
私は汗だくになり、息を切らしながらインターホンを押した。
ピンポーン
「はい」
「たっくん、私だよ」
「あぁ」
エントランスの扉が開いた。
--"あぁ"って、それだけ?
たっくんはいつもエレベーターの前で私を待っていてくれる。
私はエレベーターにのり、まだ整っていない呼吸を必死に元に戻そうと深呼吸をした。
立ち止まると余計に汗が噴き出してくる。
エレベーターが5Fで止まって、扉が開いた。
しかしやっぱりたっくんはいなかった。
予想はしていたけど、夏の暑い夜にこんなに頑張って走ってきたのにと思うと、少しづつ怒りが込み上げてきた。
ドンドンドン
「たっくん来たよ」
ガチャ
扉が開いた。
「あぁ、どーぞ」
たっくんは私の方をチラッとだけ見て視線を逸らした。
--視線を逸らした...でも、でもたっくんだ!
さっきの怒りと視線を逸らされたことへのショックは、たっくんに会えた喜びで帳消しになり、たっくんに飛びついた。
「たっくん、会いたかった」
私は、彼の服をぎゅっと掴んでたっくんの胸に顔をうずめた。
「...なんかベトベトだな。風呂入れ」
たっくんは、抱きしめてはくれなかった。
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