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暴虎馮河
ルイスは慌てながら、ロロネとフローレンスはゆったりと座りながら、シェリーとリュドミラは雑談しながら、シュウジはフレンチトーストを作りながら、エリックは……まあ置いておいて。各々が自分たちの時間を過ごしながらその様子をなんとなく見守る。
「行くわよ!」
レベッカが威勢よく走り出す。だがチヨメは動かない。
「舐めてると痛い目見るわ……!」
レベッカがチヨメの間合いに入った途端、カキンッといい音がしてレベッカが倒れる。
「これで、もうあたしの邪魔はしませんね?」
チヨメの剣はレベッカの剣を折っていた。その破片は甲板に突き刺さり、チヨメの剣はレベッカの顔の真横を突き刺している。冷たい目で見下ろされたレベッカは、声も出せなかった。その目は海賊というより、殺し屋のそれに近い。
「じゃあ、あたしの勝ちという事で」
だがそれも一瞬で、チヨメはにっこり笑うとレベッカに手を差し出す。だがレベッカは動かない。いや、動けなかったのだ。それを見たチヨメは小さく笑うと、剣を抜いて立ち上がった。そしてキッチンへ足を向けながら、大きな声でシュウジの名前を呼ぶ。
「……シュウちゃーん!フレンチトーストできたー?」
その時丁度様子を見にきたらしいシュウジが、呆れたように顔を出した。
「まだだわ!今フレンチ液につけてるところ!早すぎるって」
それを聞いたチヨメはシュンとして、すぐにあっという顔をする。
「しまった!甲板に傷付けてしもた……エリックさーん!」
軽快なステップで階段を降りていくチヨメに、意識を取り戻したレベッカが立ち上がった。
「……アタシは諦めないからね!」
そう叫ぶと、チヨメとルイスを睨みつけて、カツカツと甲板を鳴らしながら船を降りて行く。
「こりゃまた来そうな予感だね」
「ほんとだね」
その後ろ姿を見送ったロロネとフローレンスの予想は、このあと見事に的中することは今はまだ誰も知らない。
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