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心とソラ
「いちごミルクレープだ!写真一緒に撮ろ!」
ソラははしゃいでいる。うーん、どうやって切り出そう。
「それで、話って何?美咲ちゃんのこと?」
ベンチに座ったソラが話しかけてくる。やっぱり、ソラはわかってるんだ。
「うん、私とミサキのこと。高校に入ってからのこと。」
「いいよ、私も聞きたいんだ。」
「前にミサキが言ってたけど、私とミサキは高校に入ってからも、合唱部だったんだ。」
「合唱部の二年生があんまり真剣に部活をやってなくて、でも三年生は真面目にやろうとしてて、ちょっとピリピリしてた。」
「私とかミサキとか、一年生はね、どっちも先輩だからどっちにも気を遣って。合唱部は居づらい雰囲気だったんだ。」
ソラはうんうんと聞いてくれている。いつになく言葉が淀みなく出てきている。
「去年の秋くらいに、次の部長を決めるって話があって、ミサキが選ばれたんだ。ミサキは、明日まで待ってって言って。私はすごく喜んで、ミサキが部長になれば素敵だなって思ってた。」
「でも、ミサキは次の日に部活辞めるって言ったんだ。えっと、自分には部活を率いることはできません、もう合唱をやりたいとは思えなくなりました、みたいな事を言ってたと思う。それで、二年生が部長になって、ミサキがいなくなって。あんまり張り合いがなくなっちゃったから、私も辞めてしまったの。」
「私が部長になればいいって言わなければ、ミサキは追い詰められなかったのかなって。ミサキもさ、逆に私まで辞めることになっちゃったのを後悔してるのかなって。」
「それから、ミサキと私はあんまり話さなくなったんだ。なんというか、時間が合わなくなっちゃったし、2年に上がってからクラスも変わっちゃったしね。」
「でも昨日ミサキが駅前のカラオケに行くとこみたんだ。それで、あんまりよくないけど、ミサキのことが気になってついていったんだ。そうしたら、ミサキがトレーニングしてて、合唱部にいたころよりもうまくなってたんだ。でも、時々溜息ついてて。」
「私はミサキが歌いたくなくなったって思ってた。でも、ミサキは歌ってた。ずっと、練習してたんだと思う。ミサキと私は同じ気持ちなのかな。私にはミサキの気持ちがよくわかんないよ。」
最後は、少し涙声だったかもしれない。全部聞いたソラは、いつも通りノーテンキに言った。
「美咲ちゃん、楽しくなさそうだったの?」
「え?」
「美咲ちゃんは、カラオケで楽しくなさそうだったんだよね。じゃあ、心と美咲ちゃんは違う気持ちだと思うよ。だって、心はカラオケで楽しそうだったもん。」
「私は関係ないよ!ミサキのことだよ!」
「ううん、心が美咲ちゃんのことを誤解してるんだよ。美咲ちゃんと話してないんだったら、それは心自身の問題で、心自身の思いなんだよ。」
「なんでそんなこと言うの!私は関係ない!どうして私に踏み込んでくるの!ソラはいつもいつも空気を読まずにみんなに近づいて、それで傷つく人だっているんだよ!どうしてわからないの!」
言いたくない言葉があふれ出てしまう。自分では止められない想いが溢れ出してくる。
「もっと皆の気持ちを考えてから言ってよ。なんでもノーテンキに言っていいわけじゃないよ!」
気づいたときにはもう遅かった。大切なものを失ったと思った。どうしよう、逃げ出したい。どうしよう。
「ごめんね、私が踏み込んじゃって。」
でも、ソラはちゃんと向き合ってくれた。こんな私の勝手な想いに、向き合ってくれた。
「私は、こんなふうじゃないと上手く話せないんだ。ごめんね。でも、私は美咲ちゃんだけじゃなくて、心の話も聞きたいんだ。私が来てからずっと悩んでたから。だから、心のことも全部話聞いて、私が支えたいって思うんだ。」
ソラの言葉でとめどなく涙が出てくる。私は、歌が好きなんだって、ミサキと一緒に歌いたかった。ほとんど、言葉にならない。そんな溢れ出る思いを、ちょっとずつ心に伝えていった。
少しずつ、スーツを着てる人が増えてきた。もう5時を回ったのかな。
「心、落ち着いた?」
「うん、ごめんね。」
「心のこと、聞かせてくれてありがとう。やっぱり、私じゃなくて、美咲ちゃんと話さないとダメだよ。」
「でも、私にも一つだけわかるんだ。美咲ちゃんはそんな弱くないって。きっと、理由があるんだって。」
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