3人の時間

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3人の時間

気がつくと、ミサキの説明が終わっていた。 「え~うそ!美咲ちゃんってそういうの気にしてたっけ~?」 ソラは、ノーテンキだ。だから、デリケートなところも踏み込んでくれる。私はすぐ気遣って遠慮しちゃうタイプだから、とても助かってた。でも、これは裏目に出ちゃってないかな... 「やっぱり、合唱ってチームワークも必要だし、私がいても部のためにならないと思ったから。それに、中学からずっと合唱やってきたけど、最近は別のことがしたいかなって。ちょっと飽きがきてたのかも。」 「え~、もったいないな~。」 ミサキが代わりに話してくれた。やっぱりミサキはすごい。私は授業中ずっとごちゃごちゃ考えて、部活の確執とか、辞める経緯とかを一から順序立てて話そうとしてた。ミサキはイイ感じにまとめてくれて、言いづらいことは綺麗に避けてくれた。ありがとう。 「美咲ちゃんもミルクレープ行こうよ!そのあとカラオケ行こ!」 「私はこの後塾だから、カラオケはパスかな。でもクレープくらいなら。」 「また3人一緒だね!やった~!」 また3人一緒。その言葉が引っかかった。今は、あの時とは違う。私とミサキは、もう... ううん、やっぱりミサキもソラも大切な友達だ。それは変わらない。ケンカしたわけじゃない。色々あったけど、時が経てばまた3人仲良く落ち着くのかもしれないし。 ふとミサキを見た。遥か彼方を見るような目をしていた。昔から落ち着いてたけど、なんだか昔とは違う感じがした。 気のせいかな。ちょっと気まずい時期が続いたから、そう見えてしまうのかな。 クレープができるのを待つ間、3人一緒のグループチャットを新しく作り直した。 ソラは絵文字やスタンプでペタペタ遊んでいる。ミサキはよろしくお願いしますと一言。私はスタンプ一個で挨拶。 「はい、ミルクレープ3つで!」 「ありがとございまーす!」 ミルクレープを駅前のベンチで食べる。ミサキは自分から遊びをあんまり誘わなかったけど、ソラや私が誘ったらこんな感じで来てくれてた。私たちはミサキが来てくれるのが嬉しくて、また誘っちゃう。この繰り返しだった。 ...で、何話そう、何話してたっけ。うーんと、ソラの話?私たちの話?うーん...。 こういうの、あんまり慣れない。どうしよう。 「美咲ちゃん、背伸びた?165いった?」 「今年の測定で166cm。宙と別れたのが一昨年くらいだから、5cmくらい伸びたのかな。」 「え~いいな。私にちょーだい!」 「宙は、あんまり変わってないね。」 「そうなんだよ~!向こうの学校でもさ!高校でもさ!ちっちゃいちっちゃいとかチビソラとか言われてさ!まだ150ないんだよぉ!クスン...」 「まだ伸びると思うよ?心だって、あれから4cmくらい伸びたし。」 「え!ちょっと立って!比べるからミルクレープ持ってて!」 「ソラ~、食べ終わってからにしようよ。」 ちなみに私は156cm。平均より少し低めなのかな。でも、チビってほどじゃない。 「クッソ~!みんなちぢめ~!」 「やだよ~!ソラが伸びてよ~!」 そっか、こういうときはソラから話してくれてたっけ。 「それじゃあ、また明日。落ち着いたら、お昼でも一緒に食べよっか。」 「オッケー!約束だよ!」 「またね、ミサキ。塾頑張ってね!」 なんか、久々に楽しかった。中学の頃に戻った気分だ。ソラが戻ってきてくれて、本当によかった。
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