0人が本棚に入れています
本棚に追加
1・僕
とても寒く空気の澄んだ朝のことだ。
吐く息は白く、あまりの寒さに耳は痛かった。
この時間にこの駅のホームを利用するのは自分一人だったが、この日は違った。
黒いまっすぐな髪を肩のあたりまで垂らし、グレーのダッフルコートに濃いピンクのマフラーに口元まで顔を埋めた女の子がいた。
耳にはイヤホンをしていて、黒い大きなリュックを背負っている。
コートの裾から紺色のプリーツスカートがのぞいているので、高校生なのだと思った。
今日から利用するということは、転校生だろうか。
一両編成の電車で、ちょうど向こう端の乗車口あたりにその子は立っていた。
僕はその子に気づいた時、横顔が綺麗だと思った。
朝日に照らされて、彼女の周りがキラキラと光って見えた。
女の子を見てそんな風に感じたのは初めてだった。
最初のコメントを投稿しよう!