1・僕

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学校に着くなり、その子のことを仲の良い友達に話した。 もちろん、誰にも言うなという条件付きだ。 どちらかというと恰幅のいい『社長』が言った。 「そんな可愛い子?」 「ああ。キラキラしてた」 「見てみてぇー!」 ワックスで整えた髪の先を捻りながら『パチ』が言った。パチは冴えない僕と社長と違い、オシャレだ。制服なのにオシャレに見えるのはパチ自身がイケメンと呼ばれる部類の人間だからだろう。首元にはシルバーのプレートのペンダントがのぞいている。 僕と社長はそれを犬の首輪とからかうが、その彼女とお揃いのペンダントを羨ましく思っているせいもあった。大好きな彼女から贈られた首輪なら大歓迎だ。 社長とパチはこの高校で出会った友達だ。 中高一貫校の高等部でほとんどが持ち上がりなので、自然と外部入学同士が仲良くなったという感じだ。 『パチ』は休みの日にパチンコ屋に入り浸っているということで、そのあだ名がついた。 『社長』はもちろんあだ名だ。不動産会社の社長の息子なので、そのまま『社長』と言うあだ名がついた。恰幅の良さが社長ぽく見えるという理由もあるがそれはパチと僕だけの秘密だ。 「パチにだけは見せたくない」 「わかる、俺もそう思う」 「ひどいな、なんでだよ」 僕と社長は顔を見合わせて深く頷いた。 パチは憮然としている。
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