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「ああ、緊張した…心臓出る。もう出てる。」 部屋の扉を閉めると、シュウは部屋の真ん中で倒れ込むように座った。鬱陶しそうにネクタイを解いてため息をつく。何だかその様子が少しおかしくて、僕は笑った。 「何だよ、人が緊張してるのに。」 「いや、なんか新鮮だなぁと思ってさ。」 ベッドに腰掛けてシュウを見下ろす。この部屋に彼がいるという事実がさらに新鮮だった。どうやらシュウも同じ気持ちなのだろう。ぐるりと首を回して部屋の中を眺めた。 「なんか、あれだな。いい部屋だな。」 「無理して褒めなくてもいいのに。」 「そんなことねーよ。いい部屋じゃんか。」 いい部屋の定義は何だろうとふと思った。漫画やゲームが沢山ある、敷布団じゃなくてベッドがある、何十人も寝転がれるくらい広い、シュウはどんな意味でいい部屋だと言ったのだろうか。 でも僕はもしシュウの部屋に行ったら、同じことを言うかもしれない。ゲームや漫画はなくても、ここが好きな人の部屋であるという事実がいいのかもしれない。 だから僕は独り言のように言った。 「今度、シュウの部屋も見たいな。挨拶もしたいし。」 ちらりとシュウを見る。少しだけ驚いた表情を浮かべていたが、すぐに笑顔に変わった。 「いいよ。でも、今日が無事終わったらな。」 大袈裟だな、と言おうと思ったがやめておいた。きっと僕はシュウの両親に挨拶をしに行ったら、彼と同じように緊張するのだろう そんな未来が見えて、その未来が嬉しかった。
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