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夜の病室
その日と次の日 本来のシフトでは 俺は休みだった
だが 雅也を入院させた手前 俺は 責任持って 彼の容態を観察してみようと思った
何しろ 若い青山医師に限らず 誰もが 彼の診察や治療を拒んでいた
人種差別 とは違うが 基本的には 同じ感覚ではないか
雅也と愛奈
愛し合う二人の気持ちが まるで手に取るように伝わってくる
普通の夫婦や恋人たちより
なぜか とても強い愛の絆が 感じられる
一般病棟の消灯時間は21時
佐藤雅也は 他への影響を配慮し 個室であるが 20時を回った頃 俺は再び 彼の容態を診に行った
今度は 雅也は熟睡していて 愛奈が起きていた
「先生 ありがとうございます この病院に運ばれて来なかったら 雅也がどうなっていたかと思うと・・・ 先生に診ていただけて本当に ありがたかった 本当に助けていただいて ありがとうございます」
愛奈は 雅也の眠りを妨げないように 小さな声で そう言いながら 涙をポロポロと流した
俺は 売店で買ってきた りんごジュースのペットボトルと バナナとカステラを 愛奈に手渡した
「お疲れさま ごはん ちゃんと食べましたか? 愛奈さんが倒れたら 雅也さん 悲しむから しっかり食事するんだよ」
と 笑いかけた
「エエッ そんな・・・ こんなによくしていただいているのに 申し訳なくて とてもいただけません」
愛奈は 本当にしっかりした女性だ
「どうぞ 召し上がって下さい その代わりと言ってはなんですが 少し お話を聞かせていただきたいのです」
「はい どのようなことでも・・・」
愛奈がそう言ったので 俺は少し離れた椅子に腰かけ 率直に質問した
「雅也さんは 一般の人間とはかなり違う身体的特徴をお持ちですが 愛奈さんが彼に出会ったのは 何年前ですか? その時から 今と同じような姿だったのでしょうか?」
愛奈は 僕の目を見ながら ぽつりぽつり 記憶の断片をつなぎ合わせるかのように ゆっくり話を紡いでいった
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