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愛奈の愛
雅也は中学校を卒業した後 建築会社に入って とび職になりました
私は 雅也が言葉を話せないので 雅也の人格を守るためにも しっかり勉強しようと思って 高校に進学して 一生懸命 勉強しました
高校を卒業して 今は看護大学の1年生です
本当は 大学を卒業して就職してから 雅也と結婚しようと思っていましたが 雅也の気持ちを考えたら 一刻も早く 結婚した方がいいと思ったんです
きっと雅也は 毎日 私が他の誰かを好きになるんじゃないか 自分を見捨てるんじゃないか 心配でたまらないはず
私が雅也だったら 絶対そう思う
私は 雅也を 安心させたかった
雅也の生活を すぐそばで守りたかった
大丈夫 私は 雅也が好き
私は 雅也だけを愛してる
その気持ちを どんな言葉で伝えるより 雅也と結婚することで 一番 雅也を安心させることができると思ったんです
結婚して ピッタリ寄り添って 彼を幸せな気持ちにしてあげたい そう思ったから 大学に入学したら すぐ 彼と結婚しました
雅也は とび職としては 一流です
力は強いし バランス感覚も抜群で 人の何倍も働けます
立派な人間なんです
ただ 見た目が普通じゃないから みんな 怖がるけど 本当は 優しい人間なんです
私は 彼を心から愛しています
彼は 口がきけない 言葉を話せないけど 文字は読めます
ただ 指が太すぎて 普通のボールペンとか 使いにくいし スマホも操作しにくいので 言葉や文字での意思表示は ほとんどしません
だけど私たちは 心が通じ合っています
肌で触れ合うだけで 目と目で見つめ合うだけで 手をつなぎ 頬を寄せ合うだけで 愛は伝わるんです
私にとって 雅也は最高の男性です
何度 生まれ変わっても きっと雅也の恋人になりたい
今度は 私が ゴリラで 雅也が キリンでも
その次は 雅也が ブタで 私が カエルでも
何でもいいんです
私は どんな雅也でも そばに いたい
二人で 愛を確かめ合って 幸せな気持ちを なぞりながら 息をしていたいんです
だから 今回 私は 雅也が何か 様子が変だと すぐ気付いたんです
彼は 苦しいとも痛いとも 言葉で伝えられない
私が 彼に代わって 彼のすべてを伝える以外 彼は 一人では人間社会で生きていけないんです
それでも・・・・
彼を救急車で運んでもらえるだろうか 彼を受け入れてくれる病院があるだろうかと 私は本気で心配しました
たらい回しになっていたら 彼は死んでしまうかもしれないと 物凄く不安になりました
普通は 受け入れてもらえない
考えたら わかります
私自身 看護師を目指していますが 果たして救急車で運ばれてきた患者さんが まるで大蛇のようだったり 象だったりしたら 正直 触る勇気さえないと思います
たとえ付き添ってきた人が この人は人間ですと どんなに叫んでも!
救急隊員の方が到着した時 私が必死でお願いしたら 隊員の一人の方が
「今日は ヒゲ先生 当直だったはず・・・」
そう言って 雅也はここに運ばれました
ここまでは 私の話です
先生 今度は 少しだけ 先生のお話を聞かせていただけませんか?
救急隊員の方が ヒゲ先生なら大丈夫と 思うほど どんな患者でも 平等に診て下さるのは どうしてなのでしょうか?
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