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無知という暴力
「別に理由なんてないよ それより 少し気になったんだけど まだ若いのに血栓ができる理由だ」
俺は 眠っているように見えた雅也が 実は愛奈が話し始めてすぐ 目覚めたことに気づいていた
愛奈の話に 感動して涙があふれているのも見ていた
「本物のゴリラは肉は食べない 昔 動物園で 肉を食わされたゴリラは みんな若くして病気にかかった つまり 仮に見た目だけでもゴリラに似ている雅也の身体は 内臓や消化液など身体の仕組みがゴリラに似ている可能性がある その場合 肉を食べることで さまざまな病気の引き金になる」
「そうなんですか?!」
愛奈は 真っ青になる
「私 そんなこと まるで気づいてなくて 雅也はものすごく重労働だからと 毎日 肉だけはたくさん食べてもらおうと・・・ああ 私がいけなかった 私が雅也の命を危険にさらしてしまった」
愛奈は 泣き崩れた
愛奈は 雅也の枕元に行くと 雅也に頬寄せて泣きじゃくりながら こう言った
「ごめんなさい ごめんなさい 雅也 あんまり肉は好きじゃないのに・・・ 私が雅也を殺すところだった・・・ 無知ほど怖い暴力はない もしかすると 雅也のためになると思ってしていることが 知らず知らずのうちに雅也を傷つけていること いっぱいあるかもしれない しなくていいことをしたり 言わない方がいいこと言ってしまったり 身体に良くないものを食べさせて 飲ませて 雅也の命を脅かしているのかもしれない ああ 本当に ごめんなさい 私 どうすればいいのかわからない 雅也 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい」
俺は 雅也の点滴の針を抜き 二人に言った
「愛奈さん 誰だって 知らないことはある わからないまま 相手や自分を も 傷つけることはあります だけど 命は 傷ついて強くなり 失敗してこそ真に学ぶ 今のあなたなら その気持ち痛いほど わかるでしょう? まだ若いんだ これからまだまだ傷つき 失敗を繰り返すよ だけど君たち二人には愛がある 愛よりよく効く薬はない 雅也さん 愛奈さんのフォロー よろしくな 今夜は二人仲良く愛し合って眠りなさい もう消灯時間だ おやすみ」
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