僕の幼なじみ

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僕の幼なじみ

奥手で引っ込み思案な僕に 女友達は本当に少ない(泣) それは大学生になった今も変わらない…。 クラスに半分はいるであろう女子とは ほとんど口を利いたことがない有様だった。 (でも、僕はゲイではない…!!!) そんな僕の唯一の女友達といえば… 「優穂~!!おはよ~~」 通りの向こうから元気良く手を振る女の子… 幼なじみのようこ、だ。 家が近所で、母親同士が友達なのもあって 僕とようこは 子供の時から兄妹のように仲良くしてきた。 一人っ子の僕にとって 明るく勝気で活発なようこは お姉さんのようでもあり かわいい妹のようでもあり… おままごとが大好きだった僕に対して 幼い頃のようこの大好きな遊びは「虫取り」 半泣きの僕をずるずると引っ張っていっては 裏の山へカブトムシを取りに よく行ったっけ…(回想) あちこち虫にさされて途方にくれる僕を尻目に 器用に木に登っては 次々とカブトムシやクワガタを取ってくるようこ。 「はい。優穂にあげる」 ちなみに、優穂(ゆうほ)は僕の下の名前だ。 虫を取ることがようこの好きなことで その虫を飼う気はまったくないらしい。 おかげで、僕の家にはりっぱなカブトムシや クワガタがしょっちゅう飼われてて そのおかげで近所の男の子たちから 仲間はずれにされることがなかった。 (あの頃は、デッカいカブトムシを持ってると 英雄扱いだったしなぁ…) 「何遠い目になってんの?優穂??」 「あ…何でもないよ…」 「今日は何限まで授業?」 ようこは高校生活をアメリカで過ごし、 帰国子女になって戻ってきた。 大学は僕の大学から割と近い 有名大学の英文科に通っている。 「えっと…今日は2限までかなぁ」 「あたしも!じゃあさ、お昼一緒に食べない?」 「いいよ」 「優穂にさ…相談したいことがあるんだよね〜」 にっこり笑うようこは 最近ちょっとキレイになった。 好きな人でもできたのかなぁ…?? 授業がお互い午前中で終わった僕たちは 最寄り駅で待ち合わせをした。 「ちょっとね…行きたいお店があるの」 そう言ったようこに連れていかれたのは いつもとは反対方向の3つ先の駅前にある おしゃれなカフェだった。 中にはほぼ女子ばかり(!!!) 「ああ…ここ、パンケーキが美味しいから」 あきらかにアウェイ感満載だよ(滝汗) カウンターにいた背の高い男性が ようこを見るとにこやかに手を上げた。 「ようこちゃん、いらっしゃい」 隣をふと見ると 顔を真っ赤にしてはにかむようこの姿が…(お?) 「来てくれたんだ~ゆっくりしていってね。 えっと…こちらは?」 「あ、あたしの幼なじみです」 「由野と申します」 「はじめまして。新藤と言います。」 僕より更に背が高い、さわやかなこのイケメンは ようこの大学の先輩らしい。 窓際の席に通され、 僕がメニューをもたもたと見ている間に パンケーキをさっさと2人分 勝手に注文したようこは ずっと新藤さんの姿ばかりを目で追っていた。 「ようこ…話って?」 僕の声が耳に届かないらしい…(ため息) 「え…??あ、ああ、ごめんね~~」 どうやらようこは新藤さんに片思いのようだ。 「あのセンパイのことなの?相談って…」 再び顔を真っ赤にするようこ。 「優穂はさ…どう思う??新藤さんのこと…」 「今日初めて会ったから、よくわかんないよ」 「そうだよね…」 「でも…」 「でも?」 「かっこいい人だよね」 「でしょ~~~!!!」 …そこから約1時間半の間、僕は新藤さんの話を 延々とようこから聞かされるハメに(泣) でも、本当に嬉しそうに話すようこが とてもかわいくて、いじらしくて ちょっぴり寂しいけど、 幸せな気持ちになった。 それからも時々 僕はようこに連れられてはこのカフェに足を運んだ。 女友達と一緒に行けばいいのに、と言うと 「女子はダメよ!!みんな新藤さんを 好きになっちゃうもん」…だと(苦笑) 聞けば、店に来る女子は パンケーキを食べたい…というよりは そこでバイトしている新藤さんに会いたくて 来る人が大半なわけで…。 大変なモテ男子であることが判明…(羨ましい) も〜〜 、僕は噛ませ犬かっつうの!! でもそんなようこの幸せそうな姿が 僕はなんだか好きだった。 それからしばらくして… その日は4限まで授業があり、 夕方、駅に向かっていた僕は 目の前をようこが歩いているのを見つけた。 「ようこ~」と声をかけると 力なく振り向いたようこは… 泣いていた。 「優穂…」 「ど、どうしたの???」 僕の問いかけに答えることなく ようこは突然僕の胸の中に飛び込むと 声をあげて泣き始めた。 ええええええ~~~~~!!!!! 周りの人たちが 責めるような目で僕を見ながら通りすぎていく。 ぼ、僕が泣かしたんじゃないですってば~~~!! 「し…新藤さんがぁ…うえっ…ううっ…」 嗚咽が止まらないようこは あの明るくて元気なようこの姿ではなかった。 震える肩は、いつもより華奢で小さく感じた。 僕はようこが落ち着くまで、 そっとようこを抱きしめた。 それから少し落ち着いたようこが 話したことによると… 新藤さんにはなんと、結婚を約束した彼女がいた。 しかもその人はカナダの人で、 大学を卒業したら、 彼女の故郷であるトロントで 一緒にカフェを始めるらしい。 ようこを妹のように思っていた新藤さんは それを嬉しそうに語ってくれたらしく…(あちゃ~) ようこの恋は告白することなく 終わりを告げることに…。 泣き止んだようこは なぜかまだそのまま僕の腕の中にいた。 「優穂に新藤さんを会わせたのはね…」 「うん…」 「優穂はあたしの初恋の人だから…」 ええええ~~~~???そうだったのぉ????? 「優穂の目に新藤さんが どんな人に見えたか知りたかったの」 そうだったのか…。(早く言ってよ〜) 「でも、告白する前にフラれちゃったけど」 そう言って泣き笑いの顔を見せたようこは なんだか、すごくかわいかった。 「落ち着くから、もう少しこうしてても…いい?」 「うん…いいよ」 そんなかわいい幼なじみを 僕はしばらくそのまま抱きしめていた…。
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