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コンビニアルバイト編③
その時、勢い良く店に飛び込んできた若い男がいた。
眼光鋭いその男の風貌…。
ひとめで、そっち関係の人だとわかる。(893?)
その男は品物を選ぶわけでもなく、
辺りをきょろきょろと見回しながら
誰かを探しているようだった。
やがて、男がカウンターにやって来た。
「兄ちゃん…こんなオンナ来なかったか??」
男の差し出したスマホの待ち受けは
僕の足元にいる彼女の写真だった…。
「は…はい??」
僕が声を出すと共に、
ものすごい力で彼女が僕の足にしがみついてくる。
えええええ~~~~~っっ!!
「あ…来てないと思いますが…」
心臓が首のところまで
持ち上がってるような気が、した…。
「そっか…。じゃましたな」
男はその鋭い眼差しを一瞬僕にくれながら、
店を出て行った。
膝に感じる暖かい感触…。
しばらくしてから、
僕は下にいる彼女に声をかけた。
「もう…行きましたよ」
「ありがとう…」
ふらふらと立ち上がった彼女は
緊張が解けたのか、体をグラリと傾けた。
「あぶない…!!」
思わず抱きしめてしまう。
やわらかな彼女の髪からは、
甘い花のような香りがした…。
奥の控え室で彼女を椅子に座らせて、
僕の上着をかけてから、
しばらく仕事をしていると、
彼女が出てきた。
「ありがとう…ございました」
「大丈夫ですか?」
「はい…」
お礼を何度も口にしながら店を出る彼女。
店長が来る前で本当に良かった(安堵)
あの男から、
そんなに逃げたかったのかな…??
彼女の後姿を目で追いながら、
僕は人助けできたような気がして
心がちょっと暖かくなったのだが…
翌日…
大学院に向かう為に駅に向かっていた僕は
駅前の通りで昨日の彼女を見かけた。
声をかけようとして、
思わず僕は息を飲んだ。
彼女は
あの眼光鋭い男に肩を抱かれながら
幸せそうに歩いていたのだ…。
オンナは良くわからん…。
つくづくそう思う僕であった…。
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