箱庭に、めくるめく

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________ ____ 優しい箱庭の中で迎える朝は、当然、優しい。 遮光カーテンの隙間を掻い潜って差す光は、淡く瞼をそっと撫でるし、とろけるような肌触りで有名な毛布によって、ベッドを占領する四肢は、穏やかな熱に包まれている。 「_______その。」 「…、」 意識が夢と現実を行き来している途中、すっかりと聞き慣れた低い声が私の名前を呼んで、鼓膜が小さく揺らされる。 「ねぼすけ、起きろ。」 「…まだアラーム鳴ってません。」 「あともう1分で鳴る。」 「じゃあ1分後に起きる。」 「やかましい。起きろ。」 何もやかましいことは言っていない。 反論を心に携えつつ、ゆっくり瞳を開けると、ベッドの脇に片肘をついた男がしゃがみ込む姿勢のまま、私を凝視している。 __本当は、こうして朝の訪れを毎日教えてくれる瞬間を、いつも微睡の中で待っているのだと伝えたら、この人はどんな顔をするのだろう。 ぶつかった視線の先の綺麗な二重の瞳は、元々心持ち釣り上がっていて、端正な顔立ちを一際強調しているパーツのように思う。 「……」 「……」 「なんですか。」 「…別に。」 しばし見つめ合ったあと、ブランケットで覆われた口元により、くぐもってしまった声で尋ねた言葉を短く切り返した男は、そのまま立ち上がった。 「朝飯、冷めるから早く。」 そして、やはりさほど情感のこもってなさそうな声色ので、そう告げた。
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