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「とうごくんの『とう』は冬なんだ。『ご』は?」
「漢数字の五に口……あ……こうで、こう……」
指で書いてみると彼女はぷくっと頬を膨らませる。
「バカにしてる?」
「違いますよ」
笑いながら彼女の手を僕のポケットに戻した。
「夏乃さん。……僕、やっぱり夏乃さんの手をこれからも温めていたいです」
手以外だって冷たい彼女の耳に触れると彼女はくすぐったそうに肩を震わせる。
「こんな荒れた手?」
彼女が出した手を僕の手で包むと彼女は僕を見上げて微笑んだ。
「相変わらず、あったかい手だねぇ」
僕も微笑み返して、僕はしっかりとその手を握る。
「夏乃さんは?今から帰るところですか?」
「うん。バイト終わったからねぇ」
「じゃあ、駅?」
聞いて頷く彼女を見ると、僕たちはゆっくり歩き始めた。
「大学どこなんですか?」
「さっき冬吾くん出て来たじゃない」
「なら、僕が受かったら一緒の大学ですね」
「それなら絶対受かってね」
「勉強みてくれます?」
「絶対、冬吾くんの方ができるでしょ」
少しでも彼女の手が温かくなるように繋いだその手を僕のポケットに入れる。
白い息を吐いて笑う彼女を見て、僕はその冷たい手をまたしっかりと握った。
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