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「明日からどうするんですか?」
呟くと、彼女はため息を吐いて僕と目を合わせてくれた。
「もちろん、受験勉強」
「家で?」
「そうよ?」
これからも……会いたい。なのに、
「そうですか……」
僕の口からはどうでもいい返事しか出て来なかった。
彼女の降りるバス停に着いて、手を振る彼女を見て僕は少し頭を下げる。
「バイバイ……」
僕の手に残る彼女の冷たい手の感覚も忘れてしまうのだろうか。
左手を見つめて僕はぎゅっと握り締めた。
せめて、彼女の言葉がいつまでも僕の中に残ってくれますように……。
次の日、本当に彼女の姿はなくて……
その次も…何日経っても……
家を出る前に手を温めてからポケットに突っ込んでいた僕は温かいその手を冷える耳に当てた。
「あったかい……」
もう温めるその人は姿も見えないのに。
バス停に着く前から彼女の姿を探して落ち着きなく……ちら……と顔を動かしてため息を零す。
僕は毎朝続けたそれを忘れられないでいた。
冷えていく手を慌ててポケットに戻して、僕はまた周りをゆっくり見て白い息を吐き出す。
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