1年後

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1年後

 高3になって共通テストを終えた僕は空に向かってほーぅと息を吐き出す。  白い息がふわりと空中を漂ってすぐに消えた。 感じる疲労を引きずりながら足元に視線を落として、周りでとりあえずの開放感からかはしゃぐ同級生の声を聞く。  まだまだ続く試験を思いながら吹く風の冷たさに身を縮めてマフラーを口元まで上げた。  門を出てぼんやり前を向くと…見覚えのある後ろ姿。  あれは……っ!!  僕は肩から落ちてくるリュックを片手で抱えて走った。  普段走ったりすることもほとんどないからすぐに息が切れる。  苦しくて足を止めたくなった。  それでも、必死に走って手を伸ばしてあのピンクの手に触れる。 「手は?……はぁ……はぁ……」 「え!?」  びっくりしたような彼女がこっちを見上げた。 「……もう温めなくていいんですか?」  じっと彼女を見下ろすと、彼女はちょっと困ったような顔をして視線を逸らす。 「どうしてここに?」 「試験……」 「あ、そっか……」  僕が出てきた大学の門を少しだけ見て、彼女は僕が掴んだままになっていた手を見つめた。 「手……まだ冷えてますか?」  その手をしっかり握り直して少し屈んで彼女に近づく。 「……君に話しかけたくてバス停まで手袋しないでわざと冷やしてたの」 「え?」 「……ごめん」
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