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――あんなことを言ってしまうなんて、たぶん、残業のしすぎで疲れていたんだと思う。
夜遅く。他フロアの従業員はとっくに退社している中、それでも仕事が終わらずに帰れないでいたら、似たように切羽詰まっていたらしい同僚と二人になっていた。
夜のオフィスで、同年代の異性と二人きり。
その言葉だけを聞いた時、頭の中にどういうシチュエーションを思い浮かべる人が多いだろうか。
わたしは、ロマンティックだと考える人とは、気が合いそうにない。
「マッチングアプリなんて滅びれば良いと思う」
それまで黙々と仕事に取り組んでいた水速くんは、怯えたように肩を飛び上がらせた。
「怖いよ、藪から棒にどうしたんだよ! ええとぉ……黒瀬さんは、アプリを使って浮気でもされたことがあるの?」
しまった。職場ではそつがないOLを演じていたのに、ついうっかり本音をこぼしてしまった。
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