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実際、マッチングアプリは需要があったから世に普及したのだ。水速くんのように恩恵を受けている人たちもたくさんいる以上、一概に否定できないということも理解している。
そして、この願いは、単なるわたし個人の幼稚なエゴだということも。
だけど、疲れた時にふと思ってしまうのだ。
「……本当に、良い時代になったのかな」
「黒瀬さん?」
「ごめん、独り言」
通信環境さえ整っていれば、誰もがボタン一つで新しい出逢いをはじめられる時代。
『出逢いがないから、恋人ができない』という言い訳も通用しなくなった世界は、わたしのような、そもそも恋愛感情を持たない人間にとってありがたいものではなかった。
全人類が恋愛をすると思ったら大間違いだよ、水速くん。
いきなりそんな話をされても、彼はまた困ってしまうだろうから言わないけれど。
【完】
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