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男はギターを弾いて歌う。金曜日の午後7時。思ったよりも今週は人が少ない駅前広場。それでも歌う。
もう今さら、多くの人に届きはしない。でも、友人とか恋人とか特定の誰かのためでもなかった。
それでも、どこか北の街の仕事に疲れたOLとか、どこか西の街の将来が不安な大学生とか、どこか南の街の居場所を求めるゲーム廃人とか、例えばそんな僅かばかりの安らぎを求める人のためなら、歌う価値はあるだろうか。
いつかそんな誰かに届くと信じて、男は今週も東の街の駅前広場で歌を歌う。
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