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ロミオの嘘
あなたと幸せになれる方法をいくつも考えた。一緒にいたい。そばにいたい。そして私は……ううん私たちは、たったひとつの答えを導き出した。
「結、本当にいいのか?」
やや迷いの滲んだ面持ちで透が尋ねる。彼は透明のグラスに飲み干せるほどのミネラルウォーターを注ぎ、用意していた粉を半分ずつ入れていく。
サラサラと粉雪みたいに水の中に落ちて、ゆっくりとグラスの中を舞う白いソレは半分ほど溶けて、残りは底に沈んでいく。水に選ばれなかった残念な存在。
それらをダメ押しでスプーンで混ぜてみるが、なかなか手強い。
透の一連の動作をじっと見つめ、私はようやく口を開く。
「その毒、すごく苦いみたいだね」
先ほどの彼の質問には答えない。透は諦めたのか、スプーンを止めた。
「それはどうしようもないな。ただ、ゆっくりと楽に逝けるみたいだから」
声に緊張が混じっているのが伝わる。無理して笑っているのが見え見えだ。スプーンをグラスから抜いて机の上にそのまま行儀悪く置くと、彼はその場を一歩離れた。
まるでタネも仕掛けもなにもないと主張するように。
「ほら、結。好きな方を選べよ」
公平を期してか、透は先に私を促す。少しだけ迷って私は彼に近い方のグラスに手を伸ばした。
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