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朝は、爽やかな冷気が無意識の海に漂うからだに仄かな意識を芽生えさせると訪れる。小鳥の囀りが耳を擽ると目を覚ます時間だ。
からだのぬくもりを包む寝具が火照った素肌へ心地よい快感を与えている。もっとまどろんでいたいと祈る(誰に?)。もっと長く……お願い(何に?)……もっと……もっと……。
「友美、早く起きなさい! お母さんに叱られるよ!」
お姉ちゃんの声が聞こえる。布団から頭だけ出すと、五つ歳上の姉、舞が意地悪そうな笑顔を向けていた。
「もう少しぃ」
「ん、もう! いつまでもガキなんだから!」
「わかったよぉ~わかったから、あと五分だけ待って!」
あたしは枕元に用意していた制服に布団の中で着替える。
あたしの家は四人家族だ。お父さんはサラリーマンで、お姉ちゃんは大学生、そしてお母さんは専業主婦。
どこにでもある平均的家庭らしい。
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