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   心地いい、幸せな時間。  湊がどーゆーつもりで俺を抱いているにせよ、擦られるたび内臓が裏返るほど感じまくり、みっともないほど貪りまくれるのは確かな幸せ。  だけどその分終わった後は賢者タイムなんてもんじゃない。  自己嫌悪は勿論のこと、美しき若者を汚してしまったような罪悪感、いつか湊を失う未来に向かって急き立てられるような焦燥感、それでも俺はここ以外どこへも行けないんだと言う閉塞感。  ありとあらゆるネガティブ『感』に襲われ蹲るしかない。  アホなのか俺は───── 「おっちゃん……煙草は体に良くないよ……」 「ああスマン、寝てるかと思って」 「寝てても吸い込む副流煙……」  気怠そうに閉じた瞼、長い睫毛。笑うように薄く開いた唇。俺にとっては湊の何もかもが可愛くて眩しい。  煙草を咥えたまま、剥かれた服を整えベランダに出ようとしたところで布団から長い腕が伸びて来る。 「どこ行くの……」 「ベランダ。ついでに換気するわ」 「風邪引く……体もしんどいんでしょ、ここに居て」 「…………」  腰に回された腕の重みが愛しくて、これは恋以外の何物でもないと思う。そして煙草の火と共に揉み消す。
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