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   このストーク歴は長い。害を与えるつもりはないけど長いゆえに深い。  俺は二十年アラタを求め続けて来た。今ここで手を緩める訳には行かないのだ。 「ミナト……!」  この一ヶ月ちょっとで知った。アラタは流されやすい。ダメとかイヤとか言ってもベッドまで縺れ込めば何だかんだ文句を言いつつ受け入れてくれる。今は既にベッドの中、それも一戦交えた後なので流されに流されてくれる。もしやさっきのが物足りなかったのかと問い詰めたくなるくらいに容易い。  こんな(性的に)頼りない、危なっかしい人を身軽にしておいてはいけない。 「家族になろう?」  アラタのお父さん、先代の “自転車屋のおっちゃん” は無愛想だけどいい人だった。学生の一人暮らしなんて珍しくもないのに、不便はないか、ちゃんとメシ食ってるかって顔を見れば声を掛けてくれた。 『大家さん』初心者だったからかも知れないけど、優しい人だって伝わった。 『ウチも息子が一人居るけど、嫁さんが死んでからはどうも駄目でなあ』 『駄目って何が?』 『母親みたいに上手く気持ちを汲んでやれん。あいつが何を考えてんのか解らんのだわ』 『そんなのフツーだよ。違う人間なんだし。家族は一番近い他人てゆーし』  おっちゃんは剥きかけたミカンを手に、細い目を丸くしたあと笑った。笑顔がアラタに似てるなって思った。 『そうか……普通か……』 『そうそう』  思えばおっちゃんはアラタが同性愛者だと薄々気づいてたんだろう。だから滅多に家に帰って来ないって事にも。  だけどおっちゃん、もう安心して。  おっちゃんの可愛い一人息子は俺がちゃんと幸せにするからね。 「ミナトしつこいっ……!」 「うん。でも気持ちよさそう」 「〜〜〜〜〜っ!」 「気持ちいいついでにYESって言ってみない?」 「海外ゲイ動画みたいなこと言えるかあああっ」  そんなモン視聴してんのかよ。
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