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   それは単なる思い出フィルターだと口から出そうになったけど。  目の前で項垂れ、体を縮こまらせている湊がどうにもこうにも愛おしくて。  あの日の泣き顔と同じくらい不憫になって。 「俺への犯罪行為はもういい。ヨソではやってないだろうな」 「そんなの……俺、アラタ以外になんの興味もないもん……」 「今外したのと店のと、それだけか?」 「うん………あ、あと鍵、ホントにこれしかコピーしてないし、返します……」 「もういい、持ってろ」  顔を上げた湊の首に腕を回しぎゅっと締め上げると、湊は小さく苦しいって言った。そして「ホントに持ってていいの? くれるの?」って、潜り込むように俺へと顔を近づけた。だからいっぱいキスした。  髪にも頬にもおでこにも、いっぱいいっぱいキスしてやった。 「二日連続だけどオムライス作っといてやるから風呂入れ。体が冷たい」 「アラタと入りたい。子どもの時みたいに」 「それは断る」 「シブトイ……」 「あぁん!?」 「ナンデモアリマセン……」  まったく流されやすい性質(たち)だわって思う。つくづく思う。  だけど俺は湊を手放したくない、こんなにも。  こんなにもこんなにも。
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