246人が本棚に入れています
本棚に追加
それは単なる思い出フィルターだと口から出そうになったけど。
目の前で項垂れ、体を縮こまらせている湊がどうにもこうにも愛おしくて。
あの日の泣き顔と同じくらい不憫になって。
「俺への犯罪行為はもういい。ヨソではやってないだろうな」
「そんなの……俺、アラタ以外になんの興味もないもん……」
「今外したのと店のと、それだけか?」
「うん………あ、あと鍵、ホントにこれしかコピーしてないし、返します……」
「もういい、持ってろ」
顔を上げた湊の首に腕を回しぎゅっと締め上げると、湊は小さく苦しいって言った。そして「ホントに持ってていいの? くれるの?」って、潜り込むように俺へと顔を近づけた。だからいっぱいキスした。
髪にも頬にもおでこにも、いっぱいいっぱいキスしてやった。
「二日連続だけどオムライス作っといてやるから風呂入れ。体が冷たい」
「アラタと入りたい。子どもの時みたいに」
「それは断る」
「シブトイ……」
「あぁん!?」
「ナンデモアリマセン……」
まったく流されやすい性質だわって思う。つくづく思う。
だけど俺は湊を手放したくない、こんなにも。
こんなにもこんなにも。
最初のコメントを投稿しよう!