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   イカン。俺も逃走の神経が活発になり始めた。どう躱す。聞こえないフリ? いや、それより何よりズバリ言い当てられ釘を刺された事がめっちゃ悔しい……! 「ケ……ケルベ□スってナニ〜?」 「有名な監視アプリ。カレ□グとかもあるけど、あの辺やべーからな。マジで筒抜けになるから」 「楽しそう♡入れっこする?」 「アホか。俺はお前が知ってる二年間以上の事なんて何も出ないし面白くも何ともなかっただろが。お前の監視なんてする気もない」  ぐうの音も出ない。  確かにアラタの日常は地味で探り甲斐もない。でも出会い系を利用していた事を突き止められた訳だし……いやアレはアナログ且つスタンダード且つ地道なコップ盗聴のお手柄だ。どうする俺。どう切り返すのが正解だ。  そんな事をぐるぐる考えていると、アラタは徐ろにスマホを手にした。 「出会い系もちゃんと消すから」 「え!」  …………あああああ! 俺のストーカーとしての矜持、敢えて残しておいたマッチングアプリが目の前でサクッと削除された。そして続く操作により現れた設定画面でアラタはロック機能そのものを解除した。 「いつでも好きな時に見ていいから」 「アラタ…………」  よっ…………余計な事をぉぉぉぉ!  こーゆーのは隠されているからこそ暴き甲斐があるんだろうがぁぁぁぁ!  全て白日のもとに晒されたら何の意味もないぃぃぃぃ! 「全て白日のもとに晒されたら何の意味もないって顔すんな」 「しっ……してないし!」 「信用しろよ」 「!」  信用、はしてる。アラタは地味だけどイケメン大好きだけど、俺がここに居着いた一ヶ月、他の男の影なんて匂わせもしなかった。困った顔で、それでも嬉しそうに俺の世話を焼いて……  俺の事をちゃんと見ていてくれた。 「こんなおっさんで良かったら全部やるから」 「アラタはおっさんじゃないし……」 「立派なおっさんだろ。お前もおっちゃんおっちゃん言ってたし」 「アラタが自分をおっちゃんって言うから!」  
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