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  『君たちいいですか〜』 『“人” という字はねえ。ひとりの “人” がもうひとりの“人” を支えている字です』 『つまり、人と人が支え合ってるから人なんです』 『人は人によって支えられ、人の間で人間として磨かれていくんです』  この名言は、金八先生世代の母がよくモノマネをしていたから覚えた。それを聞くたび俺はアラタを支える “人” になりたいって思い浮かべた。  そしてアラタはそうなる事を許してくれるんだ。頼ってくれるんだ。 「お袋さん、今どうしてんの? 今も一人か?」 「再婚してる……」 「そっかー、ん〜〜〜」 「なに?」 「こんなおっさんが挨拶しに行ったら引くかなあ」 「あの人強いから大丈夫……ってか挨拶とかすんの!?」 「ケジメだろ。お袋さんの大事な一人息子に手を出したおっさんとしてはだなあ」 「いや、再婚したのだいぶ前だし。中高生の弟妹いるし」 「え」 「ちなみに別れた親父の方にも三人居るから。俺、六人兄弟の長男だよ」 「…………今日からお前をタンジロウと呼ぶわ」  タンジロウでもブウスケでも鬼奴でも、もう何でもいい。  アラタが呼んでくれるなら。  俺だけを見つめて呼んでくれるなら、それだけで幸せで胸がきゅうんとなる。  やっと手に入った俺の初恋。俺の夢。俺の憧れ。俺のすべて。アラタは俺の全てで俺だけのもの。 「挨拶の前にアラタは俺のことどう思ってるかちゃんと言え。俺に」 「ヤだよ」 「言え〜〜〜」 「…………懐く棒」 「コロス。ヤリコロス」 「もう無理!」
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