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   大丈夫だよ。  何も心配はいらない。  見えない未来を怖がるより、今、目の前に居る俺を愛して。 「そうだ、役所行かなきゃ。婚姻届(養子縁組届)貰って来る」 「いや、ソレはまだいい……」 「えー! 往生際わるっ!」  アラタは俺の手の上の灰皿に煙草を押し付けると、直ぐにまた次の煙草を咥え火を着けた。本気で一気吸いするつもりらしい。 「ちゃんと考えてるから。でももうちょい待って……」 「ヤだ。鉄は熱いうちに打てって言うし。間を空けてまたウジウジ色々考えて心変わりしたらどうすんだよ」 「それはない。ない、けど…………」  着けたばかりの煙草を揉み消し、アラタは気まずそうに俺を見つめた。 「何かあるなら吐け。腹の中のもの全部晒けだ、」 「俺! 彼氏とか恋人とか初めてなんだ!」 「…………」 「お、親子にっ、戸籍上親子になる前に、もうちょっと、その、ミナトとっ」  ─────……うわぁ…………  アラフォー独身男が侘しいなんて嘘だ。  少なくとも俺のアラタはこんなに可愛くて綺麗でツヤツヤだ。  俺は全力でこの人を愛するし傍に居る。絶対に離れない。
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