色眼鏡

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 最寄駅に着く。くたくたになった身体をよっこらせ、よっこらせと引き摺りながら改札を出た哲也は、ふぅ、と大きな溜息をついた。  今日も散々な一日だった。  口うるさくって冷たい課長に、定時後もみっちりしごかれた。営業成績が近い同期の山根からはやっかまれ、嫌味な言葉をたくさん言われた。 「気にすんなよ。俺ら窓際予備軍は気楽にいこうぜ」  同期の中で一番親しい川村の言葉を思い出す。最近では彼の慰めが唯一の救いだが、それでも、仕事に行きたくないという気持ちは日に日に誤魔化しがきかなくなってきていた。  近所のコンビニで弁当を買い、家に向かう。  明日の朝はまず、課長の指示通り資料を修正して、会議室の準備して、取引先に営業の電話をかけて……なんて、帰宅しながら仕事の段取りを考えている自分が嫌でしかたない。 「辞めたいなぁ」  一人呟いた言葉は、とっくに満天となった星空に吸い込まれてゆく。
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