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「原田くん、ちょっと。午後からの会議の資料のことで話があるんだが」
抑揚のない声に反応して、視界が緑に変わった。
課長だ。
出た。課長の「原田くん、ちょっと」、だ。口を開けばいつもそう。まるで感情のないロボットのように繰り返す、「原田くん、ちょっと」。
この定型句が飛び出すたびに、哲也のイライラは募ってゆく。
「この書き方じゃ見辛くて使えないな。それに文法の誤りも多すぎる。修正を入れておいたから、後で確認しておきなさい。それと、作り直す際はこの本を参考にするように」
またやり直し。慣れたものだ。哲也もまたロボットのように「承知しました」と返事をして、そそくさと自席に戻った。
説教中眼鏡がずっと緑だったことが少し気にかかったが、どんな感情なのだろうかなどと考える暇も無く、哲也は大至急資料の作り直しに取り掛かった。
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