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『緊急速報です。昨日、エブリー動物園から小ザルが一匹檻から抜け出し脱走した模様です』
朝食を頂こうとした矢先、そんなニュースが僕の目の前に飛び込んできた。
「あら、うちから結構近い動物園ね」
母親がにこやかにデザートのバナナを持ってきては能天気な感想を述べる。
「てか朝から多いなぁ」
「何嫌そうに言ってんの。休み明けの学校なんだからたくさん食べなさい」
僕は少食なんだからご飯味噌汁シャケだけで十分だっての。
んなもん隣でドンドコ朝からうるさくイスにジャンプする育ち盛りのうるさい奴にでもくれてやれ。
「キキキ、キ〜♪」
テレビから発せられた音なのか耳に響く猿の鳴き声。
朝からうんざりだな〜全く。
「ごちそうさま」
学校へ行く準備をして僕は家を出る。
「いってらっしゃいね。近くにまだおサルさんがいるかもしれないから気をつけるのよ」
母も玄関に出てきては僕に心配の念を押してきた。
親ってどうしてこうも心配性なんだろうか。外まで出てくる必要ないだろ。
「はいはい大丈夫大丈夫。……ところでお母さん──
僕に…………弟っていたっけ?」
「なに言ってんの。一人っ子でしょ」
おわり
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