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――似顔絵描きのマイは、少し話題になっているとあるニュースの記事をネットで見かけ、先日描いた似顔絵を取り出した。
自慢話ばかりのエリート夫婦と、その子どもたち。よく描けていると、我がことながら彼女は思った。
だが、その絵を見て、妻は「子どもは一人だけよ!」と半狂乱になり、夫は「嘘をつくな!」と激怒。結局、その家族六人の絵は反故にされてしまい、時間を無駄にしただけに終わった。
スマートフォンに表示されているニュースの見出しを、ちらりと見る。おぞましい事実を切り出したそれに、あらためてぞっとした。
そして、その記事の内容に、彼女は別の怖気も感じ取っていた。
自分が描いた夫妻と息子、その後ろに立つ三人の子ども――。
「……まさかね」
そう言いつつも、マイは念のため神社に行く算段を立て始め、その似顔絵をそっと伏せた。
◇ ◇ ◇
『夫が妻子を殺害か 部屋からは複数の幼児遺体も』
○○県△△区で、×日午前2時頃、「隣の部屋で、争っている声や子どもの泣き声がする」と通報があり、県警△△署員が通報されたマンションの一室に駆けつけたところ、刃物を持って暴れている男と、倒れている女性と子どもの二人を発見。二人は刃物で切りつけられており、県警は男を取り押さえ、殺人未遂容疑で緊急逮捕した。男は、女性の夫で子どもの父親とみられている。
女性と子どもは病院に運ばれたが、二人ともまもなく死亡が確認された。県警は容疑を殺人に切り替え、捜査を進めている。
逮捕された男は県警の調べに対し、「理想の家族を作りたかっただけ」といった趣旨の供述をしているが、支離滅裂な発言や、突然おびえるなど錯乱した様子も見受けられ、県警は慎重に調べる方針。
また、現場からは、衣装ケースにコンクリート詰めにされた幼児とみられる遺体が三体発見された。遺体はいずれも同年代とみられるが白骨化しており、身元の確認を急ぐとともに、今回の事件との関連を調べている。
◇ ◇ ◇
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