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高野山にいた大学時代、今の僕が望んでいるとおりヒーロー随筆を書き始めていたらどうなっていたか
そんなことを夢想してみた
97年8月、20歳の僕は最後のヒーロー小説「真田大戦記ジャスティス」を完成させた
本当は中学時代に書きたかったような物語だが思春期の僕は自分の空想を他人に傷つけられるのを避けたかった
だが物語として外へむかって表現したいとも思っていた
その望みがやっと叶ったのだ
それと同時に僕の少年時代は終わったのだろう
自然に心にわいてきた空想的なヒーローへの夢は消えてしまった
だが僕の未来は続いてゆく
ヒーローへの新たな夢を見つけなければならなかった
97年夏、連続テレビ小説で『あぐり』というドラマを放送していた
大正から昭和初期の文士が登場し、その1人に森潤という実在の辻潤という文士をモデルにした人物がいた
ここからは僕が現実にはやらなかったことだが、もし月に20冊でも本を読んでいたら辻潤についての本も発見し読みこんだに違いない
辻は自由を追い求めた文士で一説によると労働を拒否し餓死したとも言われる
少年時代に憧れたヒーローたちは巨悪と命を賭けて戦ったが大人になってしまうとその戦いは現実味を帯びていないと感じ、しらけた思いを持った
だが辻潤は違った、辻潤も自分の心のままの生き方を追い求め戦ったヒーローとも受けとれた
それは現実から浮いた絵空事ではなくホンモノのヒーローの戦いのように感じられたに違いない
そこから辻潤を超える今の僕のヒーロー・種田山頭火にたどりつけたらヒーロー随筆を20年以上早く書けたのではないか
そんなあったかもしれない歴史にひたってみた
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