かくれんぼ

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かくれんぼ

君と僕は、僕の家でかくれんぼをしていた。 鬼はいない。 君も僕も隠れる方だった。 押し入れの奥。 来るはずのない鬼に鼓動を早めながら、君と僕は肩を寄せた。 不意に僕は君を押し倒した。 幼い僕が君を押し倒した事に深い意味など本当になくて、理由もわからず丸い瞳を向ける君が、ただただ愛おしかった。 なんだか君を壊したくて。 目茶苦茶にしてみたくて。 細くて小さい君の首に、ゆっくりと両手を添えた。 頭の片隅では「いけない事をしている」「これはとても危険な事だ」とわかっていた。 それでも僕は止められなかった。 両手に力を込めれば込める程。 君の吐く息を頬に感じる程。 僕は恍惚としていった。 耳の奥と脳みそとの境目では、危険と快感を知らせるサイレンが大音量で鳴り響いて、もう何もわからなかった。 良いのか悪いのか、君は僕のする事ならば全て受け入れてしまうという少し変わったところがある子だったから。 息苦しさから顔を歪める以外に、苦痛や非難の色を示す行動や表情はなく、むしろ瞳を閉じて眉を寄せるその艶のある表情は快感と言ったものに見えた。 僕は益々歯止めがきかなくなり、指先が白く冷たくなる程、君の首にそれを強く食い込ませていった。 僕の首は全くの無事なはずなのに。 君と一緒に息を止め、一緒に息苦しくなり、酸欠状態が更に君と僕を陶酔させた。 このまま、君と僕はどうなってしまうのだろう?? そう思った時、隣に母がいた。 それ以来、君とは会っていない。 母が会わせてはくれなかった。 当然の事だろう。 子供の僕は無力だった。 どうしても君に会う術が見つからなかった。 そうして、そのうちに諦めてしまった。 僕はとても後悔している。 君を殺してあげられなかった事を。 できる事ならば、君にもう一度会って謝りたい。 「殺してあげられなくてごめんね」って。 そしてこう付け足すんだ。 「もう失敗しないからね」
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