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「どうも最近ふわっとしてるなとは思ってたけど」
目の前でカップを傾けながら、達観した世界観を持つ友人が、ふぅんと一度、頷いた。
由佳とは高校の時からの友人で、なんだかんだ学科まで同じになってしまったので、試験前にはこうして、カフェで一緒に取っている授業の復習を行うのが習慣化している。
彼女は高校生の時からずっと変わらず、ブラックコーヒーを嗜む。
気分でコロコロ変える私とは正反対だ。
「また随分と難しそうなのに引っかかっちゃって」
思うに、私の言説がシニカルさをはらんでいるのだとすれば、間違いなくこの友人の取り付く島もないような態度に長年接してきたことが要因だ。
「分かっちゃいるよ。
でもそう思っても止められるものじゃないし、今回に限っては魔的なタイミングのせいってことにしてもいいでしょ」
「まあ、一理あるけどね。
柳生といい、高梨といい」
「昔の話はもういいから」
澄ました顔で、私が何度も口にしたことのある男の名前を列挙しはじめた由佳の口を慌てて止める。
ふう、と一息ついて、私は甘ったるいキャラメルマキアートを一口飲み干した。
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