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冷房の効いた快適な室内で、CDジャケットのようなアーティスティックなデザインがプリントされた白Tシャツを着た少女が、世界史のテキストとにらめっこしている。
「んー、つまりなんでここでフランソワ一世が、非キリスト教国であるオスマン帝国と手を組んだか、ってのが肝なわけよ。ちなみに当時のスルタンは?」
「えーと、スレイマン……」
「一世ね」
あー、もう、と彼女は唇を突き出した。
何か間違えたときや、忘れてしまったときによくやる癖だ。
「帆波ちゃん、休憩しようよぉ」
「もうちょっとでキリがいいから。それまで頑張ろ、ね?」
「うう……」
受験を控えた高校二年の夏は、三年の夏ほどじゃないにしても、そこそこ辛い。
永遠に遊び呆けてられた前年の夏とのギャップがあるし、勉強を本格的に始める子、まだ遊び続けている子で、かなり時間の使い方に差が出てくる。
この世界史に苦しめられている渚ちゃんは、有名私大の推薦枠を狙っている。
そのため、まだ先の範囲で授業ではまだ取り扱っていないルネサンス期の勉強を始めているのだった。
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