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「いえいえ、楽しみにしてましたよ。
チャージしてあります?」
「まだ定期切れてないから大丈夫」
「じゃ、行きましょ」
どうやら私は中堂凪専用の人格を内部に飼っているようだ。
短い会話と、連綿と続くメッセージのやり取りの中で、私は彼と並ぶにふさわしい人物を再構成するためのオートプログラムを書き上げていた。
どうやら朝からの動揺は杞憂に過ぎなかったらしい。
そこからは全て、ベルトコンベアーのように滑らかにことが運んだ。
予約していたチケットを発券して、別に飲み物とかポップコーンとかわざわざ要らないよね、ってなって、同じデザインの学生証を係員の人に提示して、持っていたチケットの順番に、席に着いた。
全ては流れるような自然さの下、進んだ。
場内ではこれから公開される映画の予告が垂れ流されていた。
人気少女漫画の、旬の俳優たちを起用した実写化。
「あの女優誰だっけ」
「うーん、見覚えある。確か朝ドラ出てた気がする」
「朝ドラ見たことないからなぁ」
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